頼東進,2000,乞丐囝仔(=2001,納村公子訳,『乞食の子』小学館.)
頼東進は、現在、中国を代表する青年実業家である。東進は、乞食を親として持つ。針師をしながら放浪を続けた父親と、盲の母親との間に生まれ、本人も乞食として幼少期を過ごす。障害者の弟を含む兄弟の長男として、一家の衣食を調達してきた。
小学校にも上がらず、人に罵倒される日々を過ごし、非衛生的な環境で過ごす。そんなある日、ある男が、父親に対して子どもを学校に行かせるよう諭した。学費を工面することも戸籍や定住先の問題も抱える中、一家は姉を身売りに出して、東進を学校に行かせる。学校生活と乞食生活を続けながら、一家を支え、就職し、実業家として成功する。
『乞食の子』は、東進のサクセス・ストーリーである。サクセスストーリーとしての価値以上に、現在においても家族・親戚が置かれた状況の困難性(家族の中に横たわる歪)を把握できることに価値が見出せる。ライフ・ヒストリーの記述を、ストリート・チルドレンとして幼少期を過ごした経験を持つ本人が行なっている点が面白い。
また、中国の社会保障制度や、相互扶助のシステムについて非常に示唆に飛んだ質的文献である。