「24時間の情事」を見たのは、大学3年生のころだったように思う。日本語訳が悪い映画の代名詞的存在でもあるが、フランス語タイトル「Hiroshima, mon amour」を見ればわかるように、お騒がせ映画でもなんでもない。歴史映画であり、戦争映画のなかでヒロシマを描いた名作である。
この作品以外には、アラン・レネの作品は「夜と霧」しか知らない。しかし、この映画監督が1920年代に生を受け、過酷な時代を生き抜き、その経験から反戦に至ったのかを知ることができる。国家間の問題が、戦争が、そこに生きる人々に如何に甚大で取り返しのつかない影響を及ぼすのか。ヒロシマ越しに彼は伝える。
「24時間の情事」は、数少ないピカドンを直接的に描かないヒロシマ映画だ。戦後直後に撮られたヌーヴェル・ヴァーグの映画だけに、生々しさが感じられるが、ドイツと日本それぞれの地で芽生えるパッション、恋を通じて描かれている。彼の反戦のメッセージは、焼け焦げる苦しさや死そのものや人権無視と殺戮ではなく、生き残った若者達の苦悩と絶望と希望を通じて描かれている。だから、いつ見ても感じ入ることができる。
アラン・レネが生まれたこの日に、私にどうした反戦――権力に屈せず公正を求めて戦うことを教えてくれた方に思いをはせる。
今、私はあなたの語りを待っています。沈黙を破り、再び、声を取り戻すその日まで、私は待ち続けます。