昨日、ダヤに卒業生がやってきた。彼女が施設にいたのは随分と前になる。そう、2002年に彼女はここにいた。そして、2003年にジョリアと言う別の施設にいた彼女をジャーナリスト・工藤律子が動物園に招待した。それに付いて行ったことを憶えている。もう、それから2年以上が経つのだ。
彼女は現在、自分で家を借りて彼氏と同居している。5歳になる彼女の娘は、実家に預けているとのことだが、彼氏は手元で育てることを提案してくれているという。照れ笑いをしながら、彼女は自分の近況についてそう話した。それでも、子どもと彼を一緒にする気は今のところないそうだ。異母兄弟の仲で育った彼女の過去がそうさせているのかもしれない。
とはいえ、卒業生が着実に自分の人生を歩んでくれているのは、本当に素晴らしいことだ。反対に、彼女の一番の親友は路上に引き戻されてしまった。もしかしたら、昨日彼女が来たのは、その友人に会えると思ったからかもしれない。その日は、設立者の誕生日で毎年パーティーが催されてきたからだ。彼女達にとっては、母親のような存在であったし、最も信頼できる人だ。その人の誕生日に来れば、友達にも会える。そう考えても不思議はなかった。
しかし、設立者のビクトリアさんはすでに引退し、現在はカンクンに住んでいる。友人や設立者に会うことなく、しばらくして挨拶が終わると彼女は帰っていった。その後姿から、ほんの少し自信が感じられる。ここを巣立って、自立して大分経ったことからの威厳だろうか。そんな彼女がたくましく感じられた。