本当に何かに呪われている。そう思ったのは、イミグレに行く途中、しかもイミグレを目と鼻の先にして交通事故現場に遭遇したからだ。最寄のバス停でバスを降り立ったところ、後2通りも越えればというところだった。私の背後で音にならないほど鈍く、激しい大きな音が轟いた。その音に驚いて振り向くと、恰幅のかなりいい男が中を舞っていた。そのスローモーションの後、ズダっと地面にへばりついた男性。
彼に一瞬、気を取られたが、すぐに車を目で追った。車はぐんぐんスピードを増していき、逃げ去った。車に詳しくはないが、黒か濃い深緑の車両だ。何度か事故現場に出くわしたことがある。しかし、その瞬間に立会い、逃げていく車を唖然としながら見送ったのは初めてだ。
メキシコでは、「轢いたら逃げろ」と言われるほど、初動捜査が悪く、検挙率が低い。要は、逃げた者勝ちだ。ひどい場合は、発見が遅れたために死亡する。彼の場合は昼間のポランコという土地柄、携帯を使いすぐに病院と警察に連絡がついた。助かっていることを真に願う。同時に、犯人が検挙されて、その罪をきちんと償ってもらいたい。