アンティグアに「YA BASTA!」と言いかけながら近隣の村落に足を伸ばしてみた。バスでオビスコに向かった。主要道からわき道にそれ、坂道を登りだしてすぐにオビスコの景色が目に飛び込む。その町のなんともせつない風貌に心を奪われるまでには時間がかからなかった。アグアスのたもとにひっそりと歴史を刻み、人々息づく貧しい町。小さな学校。舗装されない道路の埃っぽさ。高台からの眺め。しなびてはいるが燐とした侘びたオビスコに絵描きとしての心が奮い立たされた。
来るべくして、出会うべくしてであった。30分も経ずに人はこの町を横断できるし、寂れた人の営みだけがある未観光地に多くは訪ねることも、長居することもなく去っていくであろうここは、「侘」びた小粋な村落だ。観光客に目を配ることもなく、絵描きに特に気づきも持たない。
数時間がたってもここを去る気にはなれなかった。もう時間がないことをただただ憎み、そこにいる時間を楽しむこと。日が沈み、風がシンとするころにオビスコを発った。
アンティグア―――オビスコという町に続く場所。
オビスコにはメルカドの裏手からバスが出ている他、乗り合いトラックに乗っていくことができる。ほんとに寂れた小さな町だが、そこからの眺めと、教会や町の雰囲気がいい。