現在のアルバイト先は、介護施設と塾。授業時間が不規則な大学院生にとって、アルバイトは難しい。長期休暇や時間調整から倦厭される。もちろん、私たち自身、バイト先に迷惑を十分承知している。その上で、バイトしなければならない事情があり、バイトをしている。
バイトすること自体、大学院生にはハンディキャップだ。教授の中には、バイトなんて・・・と茶を濁される方もいらっしゃれば、やめてしまえとはっきりおっしゃる方もいらっしゃる。こうした否定派の方は、往々にして裕福層の出身であり、大学進学、大学院進学が権威を持っていたころに勉強した層の出身だ。大学院の門戸が開放的になったとはいえ、経済的背景を持つか否かや、出身の社会的地位は大きくものをいっている側面は否めない。
今日は日曜日で、私にとって日曜はスペイン語を習える唯一の日だ。その機会を断ち切ってでもバイトに明け暮れる。それでも、介護の現場でのバイトは楽しい。痴呆が進行した老人から、過去の記憶を聞き出す。時代を生きた証言者の生の声は、歴史の本を紐解くのと同じくらい興味深い。また、各人が固執しているものについて観察することからや、声以外のコミュニケーションすることは、老いてなお人がさまざまな能力を持っていることを経験させてくれる。
脳細胞だけでは到底生きていけない私、というものの存在をはっきりと自覚させてくれる。この自覚を与えてくれる介護が、私にとって唯一の息抜きとも言える。
今日、勉強をサボった甲斐があった。そう、追随して合理的な理由付けをする自分がいる。